感情のラベリング
問題を抱える子供達の中には、今自分が抱えている感情が何なのか漠然としていることがとても多いです。こんな時、感情を言葉にしてあげること(感情にラベリングをすると言います)が感情に巻き込まれないための助けになることがあります。
今回は感情を認識することがなぜ人間にとって大切なのか紹介します。
①衝動的な行動をコントロールできる
感情を把握することは、その後の衝動的な行動をコントロールする力につながります。
例えば怒りを感じた時。交感神経が優位になって、鼓動が速くなる、息遣いが荒くなる、体が熱くなるなど身体が戦闘態勢に入ります。そんな時にそれが怒りだと認識できなければ、いきなり相手に殴りかかるなどの衝動的な行動をとりかねません。人間は「ああ、今感じているこの不快な感覚は怒りだな」とラベリングすることで初めて行動を抑制できます。
②必要以上の不快感情を避けられる
私達が不快感情にさらされた際、見ないふりをしたり避けようとしたくなることが多いですが、実は不快な感情は敵ではなく、むしろ味方になるという視点がとても大切になります。
例えば大勢の人の前で発表する時に緊張するのは、覚醒水準を上げてパフォーマンスを発揮するための身体的反応です。
この視点がないと、不安を感じること自体が本人にとって苦痛でどうしても避けたいものになってしまい、そう考えることで不安はより強くなるという悪循環に陥ってしまいます。不安を一旦受け止め怖がりすぎずにいることが、結果的には必要以上の不安を生じさせないことになります。
③不快感情への対処ができる
以前、深呼吸をしたり安心できる刺激を用いるなどのテクニックを使って気持ちを落ち着かせることを紹介しましたが、これらのテクニックも不快感情を認識しないとできません。感情に振り回されず自分がしたいことをするためには、まず感情をしっかり把握する必要があります。
また、適宜自分で不快感情の対処ができないと、ストレスを溜め込みすぎて何かのきっかけで爆発したり、無自覚に身体症状として出てしまうことも少なくありません。健康に生きていく上でも、感情のラベリングは不可欠と言えます。
子どもは感情をストレートに出します。不快な感情をもろに出されると親としてはイライラしてしまいますが、そんな時は「感情のラベリングを学習させるチャンスだ!」と思うと気が楽になるかもしれません。「イライラしてるんだね」「不安なんだね」そんな声かけをすることが子どもの健やかな成長につながります。
大人から見てその感情が状況に見合わないものであったとしても、感情だけは全肯定することがポイントです。子どもが感情を否定され自分自身の感情を信じることができなくなると、衝動性、感情、行動のコントロールがうまくできなくなり、将来的に様々な問題につながりやすくなります。
親にできることは望ましい行動を教えたり新しい考え方を提案することだけです。
そして、子どもの感情を肯定する姿勢を示してからの方が、子どもは大人の言っていることを受け入れやすくなります。