感情のコントロールってどうやるの?①

感情のコントロール

人間として生まれ落ちたからには、これは最も重要なテーマと言っても過言ではないかもしれません。

なぜなら人間は感情の生き物だからです。感情があったからこそ、人間は種としてここまで発展してきました。

自分にとって脅威が現れた時、人間は不安や怒りを感じて身体を戦闘態勢にすることで敵と戦ったり敵から逃げたりします。そして、その不安や怒りを感じる対象は学習を通じて様々なものに広がっていきます。(広がっていくことを専門的には「般化」と言います。)この広がり方の凄まじさが人間の特殊能力であると同時に、人間が自分自身を苦しめる原因でもあります。


少し専門的な話になりましたが、そのくらい人間と感情は切っても切り離せない関係だということです。裏を返せば、怒り、不安などのネガティブな感情をコントロールできれば、生きることが少しだけ楽になります。

 

子育ての中では、子供に感情のコントロールの仕方を教えることと同時に、親自身も感情をコントロールすることを学んでいくことが重要になります。なぜなら子供はが自分の感情とどう付き合っているかをモデルにし、学習していくからです。


とはいえ、感情のコントロールを完璧にやるなんて無理な話です。ブッダでもない限り、普通の人は感情に飲み込まれてしまうのが普通です。だからこそ、親自身が子供と一緒に学んでいく、というスタンスでいいと思っています。専門家もクライエントと一緒に学んでいきます。同じ人間なんだから、みんなできなくて当たり前。でもちょっとでも楽に生きたいのもみんな同じ。そんな前提に立ち、楽な気持ちで学んでほしいと思います。

親子関係は貯金だ!

不適切な養育が何か分かっても、なかなかそれをしないことは難しいです…人間は感情の生き物。正直なところ、忙しかったりすると子供のする事なす事、腹立たしくて仕方ないこともあります。

じゃあ、もう私は親としてダメなのか、そんなふうに思う必要はありません。

 

親子関係はよく貯金に例えられます。

親子の居心地の良い時間を積み重ねるとお金が溜まり、感情的になったり本気で叱る場面など、関係がピリついた時にお金は減っていきます。大事なのは本気で叱る場面でたっぷりお金を使えるように貯金すること。普段コツコツ貯めていれば、たまに感情的になっても問題ありません。


貯金の増やし方。それは

子供の行動を褒める

子供主導で一緒に遊んであげる

遮ったり気持ちを否定したりせずに子供の話を聞いてあげる

こんな時間をとることで貯まりやすくなります。

そして、親子関係が居心地の良いものになること自体が、大人が子供に言うことを聞かせるための土台となります

関係の悪い上司の言うこと素直に聞けますか?子供も大人も基本的には同じです。

 

 

 

不適切な養育って何?

不適切な養育って何か分かりますか?

よく検診などでは、子供を感情的に怒ってしまうかどうか問診でチェックされたりしますが、それがなぜいけないか分かりますか?

ここでは、できれば避けた方がいい養育方法について、それがなぜダメなのか簡単に紹介します。

 

①恐怖を与えること

怖い!と感じると理性的に考えられなくなるので、「なにが」「なぜ」いけなかったのか丁寧に振り返ることが難しくなります。その結果、子供には「怒られた…」という事実だけが記憶に残り、何がいけなかったのかよく分からない、なんてことになることもあります。

また、言い分などがある状況でも、萎縮するとなかなか自分の気持ちを言葉にできません。すると、自分の気持ちを適切に表現したり、感じている感情をコントロールするトレーニングが積めなくなります。その結果、成長してから対人面で問題を呈したり、感情を溜め込みすぎてストレスが精神的な問題や原因不明の身体症状として現れることがあります。


そしてこれの1番怖いところは親子関係が悪化する可能性があること。

大人でも考えてみてください。いつも怒って恐怖心を煽る人が上司だったら逃げ出したくなりませんか?子供も、恐怖心が強すぎると怒られるのを避けて嘘をつくようになったり、大きくなった時に家出をしたり、様々な問題につながる可能性があります。

 

②子供の発達レベルを考慮しない叱り方

能力的にできないことを求められて、それができないと叱られる。これは子供の無力感や自信のなさにつながります。

例えば、まだ自分の物と他人の物の区別がついていない子供が一緒に遊んでいる友達のおもちゃを取ってしまった時。こんな場合に叱ることは全く意味がありません。親としては無理矢理そのおもちゃを友達に返し、その場から離れさせることしかできません。できないことを叱られることが繰り返されると子供は「自分は何もできないんだ」と自信を無くしていきます。


極端なことを言うようですが、足の不自由な人に、「この階段を登れ!」「頑張ればできる!」と鼓舞して何とか登らせようとすること。これは誰がどう見ても虐待ですよね。

身体的な不自由さは誰が見ても分かるものですが、子供の言語、認知、運動の発達レベルが今どのくらいなのか、これは専門家でもしっかり検査を取らないと分からないことが多いです。ですから、色々工夫してみてもうまくいかない時には「ああ、まだこの発達レベルに達していないんだな」と一旦諦めて待ってみる姿勢も必要です。

テレビを離れて見させるために、テレビの前に人工芝を置いておくのはSNSなどでもよく見かける対処法ですね。このように子供ができること、できないことを見極めて環境を設定してあげることが大切です。

 

 

 

 

こんな養育が悪影響となることは、SNSをはじめ様々なメディアを通して子育て世代に広がりつつあります。「怒ったり叱るよりも褒める方がいいんでしょ?」なんとなくそれは分かってるけど、叱ることも時には必要だし具体的にどう接していいか分からないなんてこともあるかもしれません。

「褒める方がいい」というのは、ただ単に子どもの精神的な悪影響を避けるためだけでなく、悪影響を極力避けつつも子どもの行動をコントロールするのに有効だからです。そして褒め方や叱り方にも実は色々あります。)このブログではその方法について紹介していければいいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本ブログの趣旨

児童虐待」と聞いた時、何を思い浮かべますか?

最近だと目黒区5歳児虐待死事件、野田市小4女児虐待死事件などが記憶に新しいでしょうか?

映画やドラマでも、虐待をテーマにしたものがたくさんあります。

「虐待」と聞くと、とても悲惨なイメージがありますね。なんで親は我が子にこんな非道なことができたのか、自分だったら絶対にやらない。そう考える人がほとんどだと思います。

でも世の中には無知からくるプチ虐待がたくさんあることをご存知でしょうか?


英語圏では、虐待をもう少し広く捉えた概念に、maltreatment(不適切な養育)という言葉があります。これは子供の健全な発達を妨げる養育のことを指します。つまり、虐待とまではいかないけど…でも子供には悪影響だよねという養育のことです。

子供が言うことを聞かずに感情的に怒ってしまった。

子供に言うことを聞かせるために脅してしまった。

こんなことってありふれてませんか?(私はしょっちゅうです…)

子供に勉強ができるようになってもらいたいので放課後は無理矢理勉強させるために友達と遊ばせることを(本人の意思に関わらず)許さない。

きちんと謝る子になってほしいので、謝るまで正座させた。

これはかなり極端かもしれませんが…でもこんな親って、子供への愛情に溢れてると思いませんか?子供が大人になった時困らないようにやってるわけですから。

 

これらの親の行動は、親自身が子供への愛情でいっぱいにも関わらず、(いや、いっぱいだからこそ)子供には悪影響となってしまいます。とても切ないですよね…

では不適切な養育を避けるためにどうしたら良いのか?それは意外と難しいことです。

だって、学校で子育ての仕方習いましたか?自分の感情のコントロールの仕方習いましたか?子供に言うことを聞かせる方法習いましたか?

何も教えてもらってません。だから母たちは迷いながら不安になりながら、夜な夜な育児情報集めて毎日葛藤しています。

仕事しながら普段の生活を回すのもいっぱいいっぱい。それで「子供は感情的に叱ってはいけません」なんて言われたら、じゃあどうしたらいいのか!?ってなりますよね。


このブログでは、

公認心理師で子育て中の筆者が、(自分の頭の整理がてら)子育て世代に有益だなと思う心理学の情報を発信します。専門的な用語をなるべく使わず、一般にも分かりやすい内容にすることを目標にします。

 

 

おまけ

以前、指導教諭が「君達が今こうして心理学を学んでいるのは、将来親になった時に良い子育てをするためと言っても過言ではないな」と言っていたのをふと思い出しました。自分が親になり日々の生活に忙殺された中、自戒の念も込めてこのブログを書こうと思います。